毎年恒例の難関国立大合格実績の分析です。
今回は2023年の大学合格実績を元に、難関国立大現役合格率を算出し、入口偏差値(サピックス偏差値)との相関が分かるように散布図を作成しています。
以前の記事では、浪人も含めた難関国立大合格率で分析していましたが、浪人に対する意識が男子校と女子校でかなり違うことと、学校がどれだけ生徒を伸ばせるかの評価に使う情報としては現役合格を対象にした方が良いと判断し、今回から現役合格率としています。
グラフの説明
サピックス偏差値50以上の主要な私立、国立中高一貫校についての、2023年大学入試における難関国立大現役合格率と入口偏差値(2017年入試前のサピックス偏差値)の相関を示す散布図です。
首都圏の学校を対象としています。
「難関国立大現役合格率」=東大、一橋大、東工大、京大、国公立医(防衛医除く)の現役合格者数を卒業生数で割ったもの
インターエデュに掲載されている大学合格実績の情報は、学校によっては最終的な値に更新されていない場合があるため、学校ホームページの情報を正とし、例えば現役合格者数など不足する情報があればインターエデュ等の情報も参照して集計しました。
同じ偏差値帯で上方にプロットされている学校ほど、出口が良い学校ということです。
グラフ上の曲線(トレンドライン)は、入口偏差値の上昇に応じて難関国立大現役合格率がどのように上昇するかを示しますが、ここに登場する学校全体の平均をとっているため、男子校はこれより上に、女子校はこれより下にそれぞれの曲線がある想定で見た方が良いです。
例えば、男子校であれば、開成の今年の難関国立大現役合格率は入口偏差値に対してあまり良くなかったということになり、女子校であれば、雙葉が同様にあまり良くなかったと言えます。
下の画像はクリックすることで、拡大画像が表示されます。
2023年難関国立大現役合格率と入口サピックス偏差値の相関
数値
学校名 – 難関国立大現役合格率
筑駒 53.8%
聖光学院 44.1%
桜蔭 43.3%
駒場東邦 40.6%
開成 39.4%
栄光学園 36.0%
渋幕 31.5%
渋渋 30.3%
海城 29.8%
麻布 29.5%
浅野 26.8%
豊島岡 23.2%
女子学院 22.9%
武蔵 21.6%
筑波大附属 19.0%
洗足学園 14.0%
広尾学園 12.3%
フェリス 11.9%
雙葉 10.2%
鷗友学園女子 9.6%
白百合 8.8%
考察
聖光学院が開成を超える
入口偏差値が開成より低い聖光学院が、合格実績で開成を超えています。
開成の今年の大学合格実績が振るわなかったという側面もありますが、この差は、聖光の面倒見の良さや、受験に向けて勉強するのが当たり前という生徒全体の雰囲気によるところが大きいと思います。
聖光の方が自宅から近いか同じくらいの場合、開成の文化祭をどうしても経験したいとかの理由がなければ、聖光選択で良いと思わせる結果です。
駒場東邦の出口の良さが目立つ
現役合格率になると、駒場東邦の出口の良さが更に目立ちます。
個人的には、聖光に似た、真面目に勉強をしていく雰囲気があると思っており、その結果、自由な校風の学校と比較して現役合格率ではアドバンテージがありそうです。
聖光第一志望の場合の併願校の筆頭が駒場東邦というのも納得ですし、学校経営目線でも、そのポジションを維持していくのが望ましいでしょう。
男子御三家は現役合格率では分が悪い
生徒の自主性に任せ、積極的な働きかけをしない分、現役合格率では分が悪いということでしょう。
能力があってもエンジンがかかるのが遅くて、現役時は希望する大学に及ばなかったということも多いのだと思います。
その分、浪人を合わせると遜色ない合格実績になるのが特徴です。
渋渋、海城は麻布に並ぶ
現役合格率では、麻布に並ぶ実績となりました。
浅野も出口が良い
浅野も渋渋、海城と同様に、入口偏差値に対して出口が良く、真面目な校風が影響していると思われます。
女子校は桜蔭が圧倒的
女子校で見ると、桜蔭が2位にダブルスコアに近い実績で断トツです。
この要因は、サピックス偏差値で64以上の最上位層の大半が同校に入学していることが大きいです。
圧倒的な実績なので、最上位層は桜蔭に入らないともったいないという意識が生まれ、その好循環で今に至るという感じでしょう。
ただ、今後は女子の偏差値で並んだ渋渋を選択する層が、渋渋の合格実績の伸びとともに徐々に増えてくることが予想されるので、現在ピークにある合格実績が下がるのをどこまで抑えられるかの戦いになるでしょう。
桜蔭の大学合格実績は、最上位層が入学してくれて、鉄緑会ブーストで大学合格実績をあげてくれることで成り立っているので、最上位層が他の学校に奪われると実績ダウンに直結します。
豊島岡が女子学院を上回る
僅かですが、豊島岡が女子学院を上回りました。
今後は豊島岡の入口偏差値が更に上がっていくので、当面は桜蔭、豊島岡、女子学院という序列のままで推移する可能性があります。
また、豊島岡が女子学院を上回ったことは、今まであれば「女子学院が合格実績で桜蔭に次ぐ2番手だから」という理由で女子学院を選択していたような層の今後の選択に影響を与えます。
女子学院は生徒の進学にあまり関与しない学校なので、あくまで自由な校風を求める場合は女子学院を選択するが、難関大や医学部進学、面倒見の良さに重きを置く場合は豊島岡を選択するという流れが進むことが想像できます。
加えて、豊島岡は高校入試を廃止しているため、高入生が卒業した次の年に難関国立大現役合格率が跳ね上がる可能性があります。
その場合は豊島岡を選択する流れは更に加速することになり、女子学院の今後の合格実績は弱含みと推測します。
神奈川の女子校トップとなった洗足学園
数年前までは、洗足学園とフェリスは似たような難関国立大合格率でしたが、昨年くらいから差がついて、今年は更に広がっています。
洗足学園の入口偏差値は今後数年間伸びていき、フェリスは逆に若干下がることを考慮すると、大学合格実績の差は開く一方になると推測します。
これにより、先ほどの豊島岡と女子学院のところで書いた流れと同様に、神奈川上位層の選択としては、古くからの伝統や自由な校風を重んじる場合はフェリスを選択するが、それ以外は洗足学園を選択する流れが加速することが予想され、立地の良さも考慮すると、神奈川における聖光学院の女子校版といったポジションになっていくのではないでしょうか。
現在は桜蔭、豊島岡、女子学院に次ぐ女子校4番手ですが、入口偏差値の上昇に伴い、3番手の女子学院にどこまで迫れるかに注目です。